【旅レポ_1】セルス湖のほとりに佇むセルス城(Selsø Slot)」
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買い付けの途中、デンマークの歴史を今に伝える場所として知られる、シェラン島のホーンスハレ半島を訪れました。
セルス湖(Selsø Sø)のほとりに佇む「セルス城(Selsø Slot)」は、資料によると143年もの間閉ざされていたという特異な歴史を持つ城館です。現地の解説や残された意匠からうかがい知れる、その背景についてご紹介いたします。

記録に見る「時が止まった空間」
セルス城の記録は1288年まで遡るとされており、現在の主建物は1576年に貴族ヤコブ・ウルフフェルトによってルネサンス様式で建立されました。その後、1730年代には当時の主流であったバロック様式へと大規模に改修されたことが記録されています。

この城館が「奇跡の保存状態」と称される理由は、1829年に最後の居住者が亡くなってからの歴史にあります。その後、1970年代に至るまでの約140年間、居住者が現れることなく完全に閉鎖されていたという経緯があります。
この長期にわたる閉鎖期間中、電気、水道、近代的な暖房設備などの導入工事が行われなかったため、結果として18世紀から19世紀初頭の建築意匠や生活空間が、当時の姿のまま現代まで保護されることとなりました。
資料に基づいた修復と、自然光が照らす室内
1972年より、荒廃していた建物の丁寧な修復作業が着手され、翌1973年から博物館として一般公開が始まりました。館内には電気の配線設備がないため、室内は窓から差し込む自然光のみで照らされています。

1801年頃に整えられたとされるアンピール様式の寝室には、華やかな天蓋付きのベッドが保存されています。家具の配置や調度品からは、当時の生活の気配を色濃く感じ取ることができます。

バロック時代の大広間では、木製パネルに見事な大理石風の塗装(マーブリング)が施されているのを確認できます。中央のティーテーブルや当時の衣装展示などは、かつての貴族たちの社交の場を彷彿とさせます。

1700年代の面影を遺す地下キッチン
華やかな上階とは対照的に、地下には1700年代の面影を強く残すキッチン空間が広がっています。どっしりとしたアーチ状の天井が特徴的なこの場所には、大きなオープン暖炉や、長い年月を経て使い込まれた木製のロングテーブルが据えられています。

装飾的な美しさだけでなく、光の取り込み方や素材の経年変化など、資料に記された歴史的背景と現存する意匠を照らし合わせることで、北欧の古いものづくりや美意識の根底に触れる貴重な体験となりました。今回買い付けたヴィンテージピースの時代背景を考察する上でも、多くの知見を得ることができました。
✦ 現地案内資料に見る歴史のタイムライン
公開されている博物館の公式案内(パンフレット)には、1288年の起源から居住者が途絶えた1829年に至るまでの詳細なクロニクルや、各部屋の建築史的な解説がデンマーク語で記録されています。

